壮年漂流記
少年の日の思い出。
山間部育ちのねぎ少年17歳に幼馴染のテルO少年は言った。
「イカダを作って川を下ろう、目指すは有田川本流や!」
僕らは勢いでイカダを作った。
材料は発泡スチロールとガムテープだ。
完成したイカダに乗り込み僕らの少年漂流記が始まり、そして終わった。
漂流距離2m。
発泡スチロールの浮力はすごいがガムテープは水に弱い、粘着力が無くなりバラバラになってしまった。なんと化学的で物理的な事を学んだんだろう。
僕らは挫けない。直ぐに次の案を考えた。
バラバラになってしまうなら最初から形が出来てるものにすればいいではないか。
パレットの登場である。
〔フォークリフトとかで荷物運ぶ時に下にひくアレ〕
問題はパレットだけだと浮力が足りない。
そこでパレットの隙間に竹をたくさん詰めて括り付けることにより、安定感も浮力もあるイカダを完成させた。
さぁ少年漂流記Ⅱの始まりだ。
イカダで遠くまで下ってしまった場合、戻る手段が無くなってしまうので連絡用に携帯電話を持っていく事にした。
電子機器は水に弱いと少年達は知っていたので携帯を真空パックに入れて防水対策を施した。
0.5m、1m、2m、3メートォルウウゥ。
軽い軽い。前回の記録を超えはしゃぐ少年達。
しかし問題もあった。
重い。イカダがでかくて重い。
浅瀬のたびに重いイカダを持ち上げて歩く。
もうイカダが僕らを乗せてるんじゃなくて、僕らがイカダを乗せて川を下っているかのような感覚に陥る。
それでも有田川本流までは無理だったが、竹とパレットが分離してしまうまで2200m程下る事に成功し、少年達の夏は去っていった。
途中で川に流されてしまった防水携帯p-207と共に。
あれから十数年。
テルO氏から連絡が来た。
「イカダを作って川を下ろう、前の続きから目指すは有田川本流や!」
僕らは入念な計画を立てた気分になりながらイカダを作った。
材料はベニヤ板とポリタンク。
ポリタンクの有り余る浮力を利用し、ベニヤ板に括り付ける事で安定させる計画だ。
久しぶりの川にテンションがあがる元少年のねぎさん。
とりあえず飛び込む。
ポケットに携帯を入れたままで…。
まるで成長していない…。
直ぐに気づいたからか、ビショ濡れだったが画面が写っていたので一安心。天日干しで乾かしつつイカダを作り上げた。
もう、乾いたかな?大丈夫かな?と携帯を確認すると、大丈夫ではなかった。
熱のため動作出来ませんとの警告が…。
また安西先生の言葉が聞こえてきそうですが、冷やすと動作する様になりました。
さすがに川の水につけて冷やそうとかは思いませんでした!念の為!
そんなこんなで壮年漂流記の始まりです。
来年こそ有田川本流だ!!